日本を代表するいけばなの草月流第四代家元・勅使河原茜さんと、パティシエ・辻口博啓の顔合わせが実現した、新春対談。
家元主催の講習会に講師として招かれた辻口が、「人生で初めて」といういけばなのパフォーマンスを披露した。
取材・文:中林璃映 撮影:伊東武志
家元主催の講習会に講師として招かれた辻口が、「人生で初めて」といういけばなのパフォーマンスを披露した。
取材・文:中林璃映 撮影:伊東武志
華道家とパティシエ、響きあう感性

いけばな草月流の「家元講習会2008」で、家元の勅使河原茜さんのデモンストレーションに続き、辻口シェフも「人生初」のいけばなのパフォーマンスを行った。
勅使河原:作品を拝見して、びっくりしました。「やっぱりできちゃうんだな」というのがストレートな感想です。
辻口:本当に人生で初めてだったので。家元の作品を拝見してから、舞台に上がったときは、「やるなんて言わなければよかった」と大変後悔したくらいです(笑)。家元のデモンストレーションやインスタレーション、講師の方々のデモンストレーションを拝見して、すごく刺激を受けました。その同じ舞台に立たせていただいて、自分の中で新しい自分が生まれたような気がします。
勅使河原:いけばなはされたことがない、とおっしゃいますが、普段からもの作りされている方は違うな、と思いました。あんなに個性的なものを次々使って生けるのは、私たちでも難しい。非常に個性的でアクの強い花材を次々選ばれていましたから(笑)。さすが、選ぶものが違うんだなと。
辻口:いや、本当にインスピレーションで選ぶしかないですから。作品を仕上げる前に、観客席の前の方にいた方に助言をいただき、ご意見を参考にさせていただきました。
勅使河原:「奥、奥」って言われてましたね。でも、あれでぐっと奥行きが出てきて、さらによくなりました。
辻口:あ、奥か。奥に何かいければいいんだな、と素直に思いましたよ。さすがに皆さん先生だから、的確な指摘が飛んできますよね。それに、作品が完成して、みんな優しく拍手してくれたのがうれしかったです。優しいですよね。
勅使河原:あれは正直にいいな、と思ったから拍手したのだと思いますよ。草月の会員はみんなシビアなので、いいと思わなければ反応しないんです。ですから今日は、辻口さんの作品に本当に感動したんだと思います。
辻口:そうですか。うれしいですね。僕が花をいけた後、仕上げのあめ細工のデモンストレーションをしているとき、会場の方の目が、すごくキラキラしてました。「何をするんだろう」という顔つきで注目されていたのが印象的です。
勅使河原:草月の人はみんな、好奇心がとても強いので、そう思われるのかもしれませんね。いけばなというと、決まりが多い世界というか、先生の言うことをよく聞いて、言われたことをきちんとやらなくては、というイメージがあるかもしれません。出来上がりはすべて同じような作品でしょ、と思われるかもしれませんが、草月流では同じものを作ったら怒られますからね。
辻口:今回のパフォーマンスでよくわかりました。みなさん、すごく熱いエネルギーで「吸収しよう!」と舞台を見られているように感じましたから。
勅使河原:生徒であっても、先生を越えるくらいの気持ちを見せなさいっていうのが教えなのです。いろんな可能性が広がる大きな要素だと思いますよ。受け入れる、というか受け止める力がないと出来ないので受け止めようとする思いは強いと思います。

いけばなの仕上げに、あめ細工のパフォーマンスをする辻口シェフ
辻口:そうですか。うれしいですね。僕が花をいけた後、仕上げのあめ細工のデモンストレーションをしているとき、会場の方の目が、すごくキラキラしてました。「何をするんだろう」という顔つきで注目されていたのが印象的です。
勅使河原:草月の人はみんな、好奇心がとても強いので、そう思われるのかもしれませんね。いけばなというと、決まりが多い世界というか、先生の言うことをよく聞いて、言われたことをきちんとやらなくては、というイメージがあるかもしれません。出来上がりはすべて同じような作品でしょ、と思われるかもしれませんが、草月流では同じものを作ったら怒られますからね。
辻口:今回のパフォーマンスでよくわかりました。みなさん、すごく熱いエネルギーで「吸収しよう!」と舞台を見られているように感じましたから。
勅使河原:生徒であっても、先生を越えるくらいの気持ちを見せなさいっていうのが教えなのです。いろんな可能性が広がる大きな要素だと思いますよ。受け入れる、というか受け止める力がないと出来ないので受け止めようとする思いは強いと思います。

いけばなの仕上げに、あめ細工のパフォーマンスをする辻口シェフ
草月流の感性を育てる自分らしさ、家元らしさ

完成した辻口シェフの作品
辻口:先ほどのあめ細工の話ですが、僕のデモンストレーションの後に出られた講師の方が、いきなり「私もあめ細工を使って作品を作りたい」とお申し出になって、その臨機応変なことにに驚きました。
勅使河原:私たち草月流は、何か面白いなと思ったら、自分もすぐ体験してみるということが身についている。好奇心だけでない、行動力もあるのかしら。
辻口:それが草月のスタイルなんですね。常に新しい取り組みをしていくなんて、伝統を守るだけの世界ではないということですよね。
勅使河原:そうですね。自分たちの中だけで満足していたらいけないという意識が大きいと思います。たとえば今日の講習会も、いろんな世界の方たちと触れ合っていくことで刺激を受ける。それを次につなげていく、自分が何かを生み出すことにつながっていくということが大事なんですよね。「あーおもしろかった」で終わるのではなく、「次は私もやってみよう!」というのが、草月の人たちなんです。
辻口:パティシエも一緒で、そういったマインドがないといけないですよ。ずっと同じことをやっているだけじゃダメですから。そういう草月の教えでいくと、先代からも「俺を超えていけよ」という教えがあったのですか?
勅使河原:会員には言っていたようですね。私にはお互いに意識してしまい、言いにくかったみたいです。シャイなので、何か私に言いたいときは、母を通して、という感じでした。
辻口:お父さんはとても怖そうなイメージでしたが……。
勅使河原:そうですね。まぁ、怖いんですけど(笑)、でもシャイだから自分のことを表現しにくいところがあって。
辻口:それ、よけいにタチが悪いですよ(笑)。
勅使河原:実は、辻口さんにお会いするまでは、仕事に取り組まれている映像の印象から、「怖い方かも」と思っていたんです(笑)。でも、初めてお会いしたときに、すごくフレンドリーに話しかけていただき、ちょっと驚きました。
辻口:あれ? そうだったんですか? お父さんと同じようなイメージだったとは(笑)。そのお父さんは偉大な方だったから、「後を継ぐ」というのは大変ではなかったですか? そういったプレッシャーをどう乗り越えられましたか?
勅使河原:私はこの立場になって、8年目になりました。最初は私も会員もお互いに戸惑いがあったと思います。父は男性ですし、年齢もずいぶん上ですから、父が家元として会員の生徒たちをぐいぐい引っ張っていき、みんなが駆け足で付いていく、そんな状態だったんですね。それに、怖くてシャイだから(笑)。そういうのに慣れている生徒たちからすると、家元が私ではすごく物足りないわけですよね。女性同士だし、私より先輩の生徒さんたちが多くいらっしゃるし。
辻口:家元ってこういう人、という固定観念がものすごく変わったわけですからね。
勅使河原:最初はそういうことを私に対してストレートにぶつけられたりもしました。「家元なのに、存在感がない」とか。とてもびっくりしてしまいましたね。
辻口:お父さんはとても怖そうなイメージでしたが……。
勅使河原:そうですね。まぁ、怖いんですけど(笑)、でもシャイだから自分のことを表現しにくいところがあって。
辻口:それ、よけいにタチが悪いですよ(笑)。
勅使河原:実は、辻口さんにお会いするまでは、仕事に取り組まれている映像の印象から、「怖い方かも」と思っていたんです(笑)。でも、初めてお会いしたときに、すごくフレンドリーに話しかけていただき、ちょっと驚きました。
辻口:あれ? そうだったんですか? お父さんと同じようなイメージだったとは(笑)。そのお父さんは偉大な方だったから、「後を継ぐ」というのは大変ではなかったですか? そういったプレッシャーをどう乗り越えられましたか?
勅使河原:私はこの立場になって、8年目になりました。最初は私も会員もお互いに戸惑いがあったと思います。父は男性ですし、年齢もずいぶん上ですから、父が家元として会員の生徒たちをぐいぐい引っ張っていき、みんなが駆け足で付いていく、そんな状態だったんですね。それに、怖くてシャイだから(笑)。そういうのに慣れている生徒たちからすると、家元が私ではすごく物足りないわけですよね。女性同士だし、私より先輩の生徒さんたちが多くいらっしゃるし。
辻口:家元ってこういう人、という固定観念がものすごく変わったわけですからね。
勅使河原:最初はそういうことを私に対してストレートにぶつけられたりもしました。「家元なのに、存在感がない」とか。とてもびっくりしてしまいましたね。
勅使河原茜プロフィール
いけばな草月流第四代家元 勅使河原茜(てしがはら あかね)1960年、三代家元で映画監督でもあった勅使河原宏の次女として生まれる。2001年家元継承。「自由な創造」を大切にする草月のリーダーとして、みずみずしくおおらかないけばな作品を国内外で精力的に発表する一方、公共空間や商業スペースでの作品制作、能やバレエの舞台美術など多方面で創作活動を展開。また、幼稚園教諭の経験を生かして、いけばなを通じて子どもたちの感性と自主性を育むことをめざす「茜ジュニアクラス」を開講し、指導に力を注いでいる。著書に「花のプリズム」「IKEBANA EXPRESSIONS」「小さな花」「草月の花−新しいいけばなの提案」「私の花」「はじめての花絵本 あかいはなのほん、ピンクのはなのほん」などがある。










