対談

◀次へ 前へ▶

対談 2015/1/23

日本から世界へ MORI YOSHIDA 吉田守秀×辻口博啓

4. 日本から世界へ

吉田: 僕はもともとパークハイアット東京にいて、アメリカの会社ということもありアメリカ風フランス菓子を扱っていました。その後静岡に自分の店「パティスリー・ナチュレ・ナチュール」を持った時も地元のニーズはロールケーキ、シュークリーム、プリンなど。でも日本で見るフランス菓子に違和感を感じていました。

例えば「クレームダンジュ」なんてフランスのアンジュ地方の一部のレストランで出しているようなお菓子です。それが日本ではフランス菓子の代表とされているのが腑に落ちない。フランスで自分の目で見て、自分で再構築して作って、今のフランス人が食べて納得する、フランス菓子の伝統をふまえた上でのフランス菓子を作って、フランス人に認められたい、と思うようになりました。

そしてフランスに行き、三ツ星レストラン「ギー・サヴォワ」で働きました。そこでは、料理に合うデザートをベースとしてしっかり勉強しました。その後「パティスリー・デ・レーヴ」という、超モダンでクリエイティブなパティスリーに行きました。その時にアンジェロ・ミュサなどから、モダンなフランス菓子を勉強することができました。そういったフランス現地の吸収がないと、ただ日本で勉強してきただけでは、僕が思うようなモダンでスマートでセクシーなお菓子はなかなか作れなかったと思います。

辻口: パリでお店を出すのは大変でしたか?

吉田: お店を出すのももちろん大変でしたが、工事が契約して3ヶ月かかると言われていたのに実際は8ヶ月かかりました。壁から色々なものが出て業者に追加料金で対策をお願いしなければならなかったり。日本の当たり前が当たり前じゃないんです。お店を出してからも大変なことがたくさんありました。基本的にフランスではみんな、日本みたいに真面目な人ばかりではありません(笑)。そんな中、怒った後に許したりといったフランス流の話術を駆使しながら業者さんたちとつきあったり。知り合いのパティシエやショコラティエにも助けられながら、毎日やっています。今の客層は、8:2くらいで、8が地元のフランス人、2がアジア人ですね。やはりフランスでやっている以上、フランス人に愛されたいです。

辻口: 僕も2014年12月に韓国に2店舗目の「モンサンクレール ソウル」をオープンしました。今まで色々な百貨店からモンサンクレールに出店依頼のお話をいただいていましたが、今までは出してなかった。というのも、エスプリを理解してくれる人がなかなかいなかったんです。

自由が丘に「モンサンクレール」をオープンした当初、キム・ドンミンという韓国からの求職者が来たのですが、当時のオーナーがさまざまな事情で就職をお断りしました。その後彼は頻繁に店にくるようになり、サロンに座ってはお菓子を食べてメモを取ったりしていました。店がオープンして3年後、その時僕はオーナーになってたのですが、またキム君が就職希望にやってきました。面接では「命がけでここで働きたい」と言われ、すごいな、と(笑)。入社後も彼はがんばってくれてムース場を任せられるセクションシェフにまでなったのですが、お母さんの病気もあり韓国に帰って行きました。

トークショーに参加したスイーツコンシェルジュの皆様と

トークショーに参加したスイーツコンシェルジュの皆様と

その後時が流れ、韓国ではインターネット上で検索されている人気キーワードとして「モンサンクレール」が話題となりました。確かに自由が丘のモンサンクレールでは土日に韓国のお客様が多かったです。そんな中、韓国の現代グループからモンサンクレール出店のお誘いがあったのですが、僕は迷っていました。一方その頃、キム君はアジア圏でも有名なケーキが評判の韓国発コーヒーショップチェーン「トゥーサムプレイス」のトップに立っていました。そんなキム君から「韓国でモンサンクレールをやるなら僕しかいない、トゥーサムプレイスも辞める」という申し出があり、彼が引き受けてくれるなら……と安心してOKし、モンサンクレール ソウルがオープンしたのです。

辻口グループにはさまざまなブランドがあり、それぞれにシェフがいます。シェフたちとの信頼関係がなければ、こういった事業はできません。スタッフとの信頼関係も重要です。吉田シェフも、今パリで新しい時代を築こうとしている。ぜひみなさんにも吉田シェフを盛り上げていただきたい。

吉田: 僕の今後については、僕の中でビジネス路線だけでない部分もあるんです。今やっとパリのお客さんたちに僕の表現したいことをわかっていただいて、自分の足で立っている実感がして居心地がいい。次はそれをベースにして、何か新しいことをやっていきたい。例えば自分のシャンパンを作るなど。また、今の店は割と渋い場所にあるので、それとは別にショコラとマカロンのお店などをできるといいのかな、と。お菓子作りは幅が広いですが、ショコラは1粒の中に収めるという制限があります。ショコラの中にぎゅうぎゅうに詰めたり、逆に何も詰めないなど、制限の中ならではの表現の面白さがある。

日本だけで勉強するのと、フランスで色々な地方を見て歩くのは、全く違います。菓子作りの理論や技術だけでなく、酒を飲んで話をして、その地方の空気や香りを嗅いで歩いたり、といった部分を自分なりに落とし込んで、アウトプットできるといいな、と思います。

辻口: 今、世界からどんどんカカオが少なくなっています。特に希少なものは価格もどんどん高騰している。そういったカカオとの出会い、またカカオだけでなく、アーモンド、ナッツなどさまざまな素材との出会い。それらを世界中からいかにして入手していくか。食材の源流を見ていくと、さまざまな出会いがあります。食材ハンターの旅に出てみたいですね(笑)。

吉田: その時はぜひご一緒させていただきたいです(笑)。

吉田守秀 プロフィール

静岡県清水町生まれ。日本菓子専門学校専門学校卒業後、『アニバーサリー』、『パークハイアット東京』、『菓子工房オークウッド』を経て、2005年に地元静岡に『パティスリー ナチュレナチュール』をオープン。2013年にはパリ7区に『MORI YOSHIDA』をオープン。
2006年・2007年 TV東京「TVチャンピオン2」優勝
2014年パリで開催されたサロン・デュ・ショコラの品評会「C.C.C.」にて、「AWARD DU CHOCOLATIER ETRANGER EN FRANCE」を受賞。

こんな記事もどうぞ