対談

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対談 2015/1/23

日本から世界へ MORI YOSHIDA 吉田守秀×辻口博啓

2. C.C.C.品評会の出品作

ショコラ

トークショーで参加者に提供された吉田シェフのC.C.C.出品作品

辻口: C.C.C.初受賞おめでとうございます。初めて出品してみてどうでしたか?

吉田: 僕も実はいきなり賞が獲れるとは思っていなくて、まずは僕のチョコレートの自己紹介をして食べていただこうと思っていました。もちろんプライドを持って作ったものなので、そこそこの評価があるといいな、くらいの気持ちでした。後で聞いた話ですが、お店のお客さんにC.C.C.の品評委員もいたそうです。

今回の出品作品を紹介しますと、まず「ビオノワール」はヴァローナ産の70%ビオ(オーガニック)のチョコレートをシンプルにガナッシュにしたものです。黒い粒が載っているショコラオレが「チャイ」で、チャイ(スパイス入りミルクティー)をショコラオレでガナッシュにしています。ショウガの味とビオを組み合わせることで、味に拡がりが出ています。もともと僕はチャイが好きでよく飲んでいるんです(笑)。そして僕のスペシャリテで、メープルシュガーをキャラメルにした「M(エム)」というケーキから発想した、メープルシュガーとヘーゼルナッツのプラリネです。みなさんがよくやるバリエーションに、たとえばマカダミアナッツなどナッツを加える、またレモンや柑橘系のゼストを入れて味に拡がりを出していく、という手法があります。僕は砂糖を変えました。メープルシュガーをキャラメルにして、コルシカ産のヘーゼルナッツを加えプラリネにしたものです。

辻口: メープルシュガーを使ったショコラは初めて聞きました。美味しくオリジナルなアイデアで、他の人がやっていない方向感がいいですね。

僕の今回の出品作「DNA ショコラ」は、郷愁を誘うショコラをテーマにしています。人間が生まれて一番最初に口にする味は母乳で、母乳の成分を調べると、グルタミン酸というアミノ酸が非常に豊富に含まれています。そして自然界の食材の中で一番グルタミン酸を多く含んでいるのが「昆布」です。特に昆布の中でも「真昆布」が味が一番クリアで繊細なんです。ただし60℃以上で昆布を出すとえぐみが出てしまうので、水出しコーヒーのように水出ししたらさらにクリアなエキスがとれるのでは?その旨味をカカオに添加することで、カカオの素材そのものが旨味によって活かされるのではないか、というロジックを自分の中で作り上げ、そこからショコラを組み合わせていきました。

さまざまな個性をもった、ペルー、ベトナム、マダガスカルなどのカカオ。そしてそれらがナッツに合うのか、それとも柑橘系と合うのか、少しキャラメルを入れて深みを出した方が合うか、など。日本食が世界遺産となり世界が注目しているこのタイミングで、昆布の旨みを使った「DNA」というテーマが活きてくると思いました。

吉田: そういうことだったんですね。僕はフランスに長くいるので、今までのフランスの味にない、僕のDNA的には懐かしくなる暖かい味で(笑)。口溶けも最高にいい。昆布とチョコの相性がいい、という勉強にもなりました。僕も辻口さんのチョコについて、「UMAMIって何?」と聞かれましたよ(笑)。フランス語にUMAMIという言葉はないので、まずそこを理解させるのが難しい。今世界的に日本ブームですし、基本的にフランス人は日本にいいイメージを持っています。

僕の出品作の一つに、「SHIZUOKA」という静岡茶と静岡産みかんをアンフュゼさせたものがあるのですが、フランス人は日本のものに興味があり、もっと日本のものについて知りたい、と思っているんです。醤油は何からできてるんだ、原材料に大豆と書いてあるがなんで大豆がこんな味になるのか、など(笑)。でも日本人だからといって誰でも答えられるわけではない質問なので、そういう意味では自分も勉強しないと、と思いました。

辻口: 審査員には「日本にショコラの文化はないはずなのに、日本人がこんなにうまくチョコレートを作れることが信じられない」と言われました。でも今、サロン・デュ・ショコラ パリをはじめ、吉田シェフや小山シェフなど、日本人が作るショコラが世界的に評価されている。今一番新しいシーンですよ。

その一方で、フランス人ショコラティエの出品作を見てると、去年出したショコラが1個か2個入っていることもあり、疑問に思っているところはあります。去年と同じものを出すことが禁止されているわけではないので、自分の自信作・スペシャリテを入れているんだと思うんですけど。僕は日本人で真面目なので(笑)、出品作はゼロから全部オリジナルで行こう、と。審査員にも「次はどういうものを作るのか楽しみにしている」と言われました。

吉田: 僕は今回のサロン・デュ・ショコラ パリでは、C.C.C.には出品しましたが、ブースは出店しなかった。というのは、会場の近所にお店があるからです。僕がサロン・デュ・ショコラの会場に行く時も、スクーターで5分でした(笑)。そんな状況でブースを出す意味があるのかな、と思っています。ブースでは買えなくても、お店で買えますから。
今、サロン・デュ・ショコラ パリで日本人は誰でも彼でもブースを出そう、という風潮を感じます。日本でしっかりチョコレート作りをやってきてる人達に出てきてほしいのですが、パリでブースを出すことが自体が話題作りになってしまうと残念ですね。


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