対談

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対談 2011/10/28

現場至上主義 渡邊剛×辻口博啓

第一線の心臓外科医として、日本の医療に新しい風を吹き込む渡邊剛さん。外科手術用ロボットを導入して日本人として初めてのロボット心臓手術を行い、世界の最先端医療であるロボット心臓手術を日本で唯一行っています。一見すると、辻口シェフとの共通点はないように思えますが、意外にも心臓外科医とパティシエには深いところで共鳴する部分がありました。独自の世界観を持ち、それを追求していく2人のプロだからこそのトークセッションです。

文 松永真美  写真 中本浩平

現場に出ることの意味

辻口:先生がこの世界に入るきっかけになったのは「ブラック・ジャック」だったんですよね?

渡邊:そう、ちょうど中学三年生くらいのときに連載が始まって。

辻口:そのときまでは医者になろうとは思ってなかったんですか?

渡邊:実は、僕が読んだのは連載が始まってからずいぶんあとのことで。友達に教えてもらって高校一年生のときだったんですよ。それでバックナンバーも全部買って、毎週楽しみにして。

辻口:僕も小3のときに食べたショートケーキに感動して、この道しかないと思いましたけどね(笑)。先生は、ドイツにいて勉強されていましたよね。医療の分野はドイツが先進国なんですか?

渡邊:日本人が手術をさせてくれる、執刀させてくれる環境にあるのはドイツくらいなんですよ。わざわざ外国に行って助手ばっかりやっていてもしょうがないでしょう。実際現場に入って経験しないと。

辻口:なるほど。なんでもそうですけれど、やはり現場に入って、実感してっていうのは大事ですよね。先生は日本の心臓外科をどういう風に見ていらっしゃいますか?

渡邊:もっともっとレベルが上がらないといけないと思いますね。ただ、チャレンジする人が少ない。それに、学会ももちろんあるけれども、それがもっと機能しないといけない。

辻口:学会は、理論的なことだけではやっぱり、現実とはずれてしまうというか、世界がちがうというか?

渡邊:そう、僕が求めている世界とは違うんですよね。不遜な言い方かもしれないけれど、学会に行っても得ることがほとんどないんです。もちろん、若い人の発表のチャンスでもあるし、僕たちの世代は学会を引っ張っていかなければならない立場。でも、やっぱり派閥なんかもあってね。僕はそういう場所にはいないから。


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