対談

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対談 2010/7/9

競争力を高め、デフレを吹き飛ばせ! 勝間和代×辻口博啓

勝間和代×辻口博啓 対談 1/3P

出口の見えない閉塞感、日本経済に漂う暗雲を、威勢よく払いのけるお二人の対談が実現しました。人気経済評論家・勝間和代さんと、NHK教育テレビ「仕事学のすすめ」で共演した辻口シェフ。事業主の立場から日本経済を再生するために必要なことは何かを尋ねていきます。競争を通じて一人ひとりが力を発揮できる社会を実現し、成功者には拍手を。デフレ不況を吹き飛ばす、熱のこもった会話が繰り広げられます。

文 橋本紀子  写真 中本浩平

特定の産業を守る政策はいらない

勝間和代×辻口博啓 対談

辻口:今日はせっかく勝間さんに来ていただいたのだから、今の日本が抱えている問題について伺いたいと思っています。パティシエだから政治を語らないというのではなく、僕は経営者でもあるわけで、我々も政治に対してもっと敏感に反応していかなければいけない時期に来ている。

勝間:(拍手)。先ほどのNHKのテレビ番組の収録で、辻口さんがおっしゃっていたことがその通りなんですよ。仕事で必要なのは「情報公開」「ちゃんと言語で主張ができる」「人の気持ちがわかる」。同じことをどうして国ができないのか。辻口さんだったり、ワタミの渡邉美樹さんだったり、タリーズの松田公太さんだったり、私は日本では若くて優秀な人はみんな食べ物に向かうという持論があるので、今日はお会いできてうれしいです。

辻口:食べ物はいいか悪いかがストレートに伝わっていく国境のないツールですから。

勝間:それに、少額投資で始められる一番レバレッジの効く業界なんです。お金にならない業界に人は集まらない。日本の製造業は初期投資がめちゃくちゃ必要な上に、取引関係を仲間内で囲ってしまって新しい人が入れない仕組みに。それで、皆、スイーツやラーメン屋さんなど外食をめざしていく。

辻口:どうしたら日本をもっと豊かな国にできると思いますか。

勝間:国際競争力を高めていくことです。まずはエコポイントやエコカー減税といった一部の産業を守るための政策を止めたほうがいい。日本の製造業にはとっくにつぶれていい企業がたくさんあります。

辻口:市場から競争の原理が働いて、排除されなくてはいけないところに国民の税金が投入される。生きたお金の使われ方がされていない。

勝間:小麦の関税だって高いじゃないですか。牛乳も農政が買い上げでやっているから日本は高いんです。人件費は変わらないとしてもそういうことを止めればケーキの価格は2~3割は安くなりますよ。

辻口:法人税が40%というのも厳しいです。シンガポールの17%を始め、他国に比べて法人税が高いことが日本の国際競争力を低下させていると思います。

勝間:でも、保護したい業界には減税がいろいろ細かくされていて、じつは法人税に40%もかかっていません。パティスリーには40%かけるけど、一部の製造業には減税しているんですよ。特定の産業を保護する政策を全部止めて、そのぶん全体税率を下げるというのはあると思います。

辻口:一から崩してやり直すことはできないのでしょうか。

勝間:1億2千万人国民がいて、全員大人と仮定します。1億人が損をしても、残りの2千万人が得をする政策を掲げられると、2千万人がその政党を強烈に支持する。1億人は税金がどこに使われようがさっぱり知らないし、投票にも行かない。それでは変わりようがありません。

辻口:政治に関心をもつ。そこから道を開拓していかなければいけないですね。

セーフティネットを備えた自由競争社会へ

勝間和代×辻口博啓 対談

勝間:日本が徹底的に悪いのは、何かに投資をしたときにプロジェクトという発想がないことです。プロジェクトであればかかる費用に対して効果がどれくらいか検証が必要になる。それをせずにずっと来ていたんですね。

辻口:勝間さんは事業仕分けに参加されていましたが、そもそも独立行政法人が収益に対してまったく責任をもたず、国民の税金で赤字を補填していくということ自体が不思議でしょうがない。

勝間:まさにその通りです。外部の人が入って仕分けをしなければいけない状況自体が問題。自分たちで収支計算し、おかしなことは自分たちで止めていくシステムにならなければ。私は国交省の仕分けをしましたが、いろいろ見ていくと入札システムも形だけ。入札に参加した企業は1社だけとか、情報を事前にリークして彼らの息がかかったところが入札しておしまい。

辻口:こちらから見ていると、独立行政法人も全て民営化して存在の意味を独自で見出してもらわないと。税金の使い方に歯止めがかからなくなっていると思います。

勝間:民主党になって事業仕分けが行われたのは最大の成果です。ここまでどれだけの無駄遣いをしてきたかがようやく見えてきました。

辻口:しかし、仕分けしているのは見れますが、その後どうなったのか報告がないことに、国民の不信感がつのるのではないかと思いますが。

勝間:本当にやっているところはやっています。仕分け人を厳しい人にするか、お手盛りの人にするかで結果がまるで違います。大臣次第です。

辻口:仕分けられても、結果的に本当に廃止につながるのかが疑問です。

勝間:それが問題で、省内に戻したらぐちゃぐちゃでは意味がありません。人事評価を変えて、そういうことをやる人がクビになるような方向にならないと。

辻口:おかしいところがあっても治療をしたら自分の天下り先がなくなってしまう。自分たちのポストを守るため生かしておくという発想ですか。

勝間:ソ連がなぜ崩壊したか、そのプロセスを見ればいいんです。国のえらい人たちが経済運営をし、資源をコントロールした。国家が経済運営するのが正しいと思い込み、大崩壊に陥った。日本もバカな市民に任せるより、賢い官僚が運営すればいい、そう勘違いしてきた歴史がある。国民から金を吸い上げて第3セクターに貸し出したり、一部の産業にさまざまな形で振り分ける。戦後まもなくの何もない時代にはそれでいいけれど、1970年代か、遅くとも80年代には止めるべきだった。

辻口:日本経済はもっと自由競争にすべきなのでしょうか。

勝間:自由競争にして、その代わり再教育やセーフティネットを備えるのが基本です。ただ、それをやろうとすると政治家の評判が一時的に悪くなります。自分の実力に対し過剰にお金をもらってきた人たちが高齢者となった今、自分たちの利益を守るため、大きな抵抗勢力として立ちはだかりますから。とにかく状況が一気に変わることはありません。私はどこの政党が選挙で勝っても、同じような政策であればそちらに動く。政党を支持するというより、政策ベースの提言をしっかりおこなっていきたいと考えています。

勝間和代(かつま・かずよ)プロフィール

経済評論家。1968年東京生まれ。早稲田大学ファイナンスMBA、慶応大学商学部卒業。当時最年少の19歳で会計士補の資格を取得、大学在学中から監査法人に勤務。アーサー・アンダーセン、マッキンゼー、JPモルガンを経て独立。現在、株式会社監査と分析代表取締役、内閣府男女共同参画会議議員、中央大学ビジネススクール客員教授として活躍中。幅広い分野で発言をしており、ネットリテラシーの高い若年層を中心に高い支持を受けている。著作多数、著作累計発行部数は320万部を超える。
オフィシャルブログ http://kazuyomugi.cocolog-nifty.com/

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